【研究紹介】人を貸し出す図書館は社会をつなぎ直せるか?

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健康スポーツ学科では教員免許を取得でき、学生の皆さんが教員採用試験に合格できるよう、多くの先生方がサポートしています。

そのうちの一人、本日は、比較・国際教育学を専門とする佐藤裕紀先生の研究の一部をご紹介いたします。

※比較・国際教育学とは世界各国の教育を比較検討し、日本の教育を良くしようとする学問です。

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近年、SNSで似たような境遇、関心の人々で固まり、同じような意見や情報にばかり触れ、逆に異なるものとは距離をとるといった、社会の分断が進んでいるといわれています。


また、コロナウイルスで多くの人々が自粛や在宅での生活をよぎなくされる中で、医療従事者の方や感染者への心無い言動や、ささいなことでネット上において人を叩くような、とげとげしい風潮も一部にみられます。


ウイルスという目に見えなくて「わかりづらい」ものは、不安や恐れを生みます。そして不安は、時に、自分とは「ちがう」「わからない」他者や集団への攻撃性を生むことがあります。皆さんの学校生活でも思い当たることはありませんか?

 


このような無理解からくる攻撃は、しばしば、障害のある方や人種的にマイノリティ(少数派)とされる人々に対して向けられてきました。でも誰でも環境が変われば、マイノリティになりますし、ある部分や価値観ではマイノリティな面があるものです。


では、どうしたら、多様な背景のある人々が、分断されず、自分も他者も生きやすく過ごせるでしょうか?

 


北欧のデンマーク発祥の取り組みである、生きた人を貸し出す仮想の図書館「ヒューマンライブラリー」は、2000年からこの課題へ挑戦しています


この仮想の図書館では、障がいをもっていたり、人種的なマイノリティであったりすることで人々から近づきにくいと思われたり、偏見を受けやすい立場にある人が、「本」となって30分程度貸し出されます

参加者は、興味のある「本」を借りて、1対1で、あるいは1対数人でその「本」と対話し、聞いてみたいことを聞くことができます。

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参加者と「本」は語り合う中で、互いの中に共通点を見つけたり、時には悩みを語り合ったり、自分の視野を広げたりすることができます。


多様な人々と対話したり、安心して、自分自身の困ったことや悩みも含めた「弱さ」を語り合え、共有できるような場があることで、人は、自分の未来へ前向きな展望をもてるようになっていきます。

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様々な人々がそのように思える場を地域や社会の中でどのように作っていくのか、そのために教育は何ができるのか、私自身はそこに関心があります。

そして、2015年から新潟でもヒューマンライブラリーを学生と一緒に継続して実践しながら考えています。


 

デンマークでのヒューマンライブラリーをはじめとして、北欧発祥の対話の実践について書いた佐藤裕紀先生の研究は最新号である『日本生涯教育学会年報第40号』、『異文化間教育学会紀要51号』に掲載され、共著で本も出ています。

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オリンピック・パラリンピックをはじめスポーツの世界でも「共生」は大きなテーマです。

多様な人々が共生していくためにはどうすればいいのか?そんなことに関心のある人も、是非、健康スポーツ学科で学んでみてはいかがでしょうか?

 

 

佐藤裕紀先生の紹介ページ(クリック)