日本体育学会 口頭発表(体育経営管理領域)~山本悦史先生~
前回、若井由梨先生の口頭発表の内容を紹介しました。
今回、口頭発表で研究成果を聴衆に伝えた山本悦史先生の発表内容を紹介します。
以下、山本先生の報告です。
― ― ― ― ― ― ― ―
日本体育学会第69回大会が徳島大学常三島キャンパスにて開催され、私は体育経営管理専門領域にて口頭発表を行いました。
発表タイトルは「プロスポーツの発展過程に生じるジレンマの実態:Jリーグを事例として」というものです。
開幕から25年を迎えたサッカーJリーグの中には、現在も深刻な経営難に直面しているクラブがある一方で、クラブとしての収入を増すことに成功し、より多くの社員やスタッフを採用し、地域の様々なサポートを獲得しながら、素晴らしいスタジアムや練習場を使用できるまでに成長したクラブもみられるようになっています。
しかし、このように輝かしい成長を遂げたクラブであっても、時間が経過するにつれてその成長が頭打ちになったり、地域に暮らす人々の欲求(ニーズ)に柔軟に対応することが難しくなってしまうことがあります。
「こうした現象がなぜ起こるのだろう?」というのが、本研究の出発点となっています。
Jリーグに加盟する7つのクラブ(Jクラブ)に対して行ったインタビュー調査の結果、いくつかのクラブでは「組織が成長していく過程で、逆に失われてしまう能力」が存在しているということが、少しずつ明らかになってきました。
個々のクラブが地域に暮らす人々の「あれをしたい」「これをしたい」という思いに応えられなくなるのは、単に「お金がない」「人が足りない」だけが理由ではなく、目の前の「お客様」(サポーターやスポンサー企業など)の声に積極的に耳を傾け、彼ら/彼女らの欲求(ニーズ)に忠実に対応しながら、自分たちの製品や組織、業務のプロセスを「合理的に、正しく」つくり上げていった結果によっても生じる可能性があるということです。
今回の学会でも、全国各地で活躍されているたくさんの研究者と交流することができました。
ここには、スポーツの「研究」を通して、人々を幸せにしたい、社会をより良いものにしたいと考える「同志」がたくさんいます。
仲間と一緒になって夢を語り合い、励まし合い、ときには真正面からぶつかったりしながら、自分自身を磨き、目標を達成していく。
その過程で感じられる充実感は、きっとアスリートの世界でも、研究者の世界でもまったく同じ。
だから、ものすごく楽しいし、たまに苦しいことや上手くいかないことがあったとしても「やっぱりやめられない!」って思ってしまうのです。
山本悦史先生
― ― ― ― ― ― ― ―
山本先生の専門はスポーツマネジメントです。
今回、「クラブの運営」という観点から行われた研究を発表されました。
Jリーグを含めたスポーツクラブは、決して恒久的な存在ではありません。
運営、経営に行き詰ればクラブは潰れてしまいます。
もしクラブが潰れてしまえば、当然、従業員はそこで働けなくなってしまうし、地域にとってはスポーツを享受する場を失ってしまうことになります。
スポーツは生活必需品というわけではありません。
しかし、スポーツは私たちの生活をより豊かにしてくれます。
また、高齢社会を迎えたわが国では、スポーツの重要性は増すばかりです。
だから、クラブが存続することはとても重要なことなのです。
研究というと、何か大それたことを想像する人もいるかもしれません。
しかし、山本先生が今回の研究の出発点を「成長を遂げたクラブが、なぜ頭打ちになり、地域の欲求(ニーズ)に応えられなくなるのか」としているように、研究は自身の「素朴な疑問」からスタートします。
おそらく、みなさんも「なぜ?」という素朴な疑問を抱くでしょう。
高校生のみなさんなら、「なぜ、勉強が頭に入ってこないんだろう」とか、「どうしたらもっとテストの点数を取れるようになるんだろう」とか、素朴な疑問があるのではないでしょうか?
スポーツを行っている人ならば、「なぜ、あの人はシュートが決まるのに、自分はシュートが決まらないのか」とか、「どうしたらうまく泳げるようになるのか」とか、日常の生活のなかに小さな、そして素朴な疑問があるのではないでしょうか?
ただ、これだけでは研究にはなりません。
それを「こころ」から考えるのか、「脳」から考えるのか、はたまた「物理法則」から考えるのか、「感覚」から考えるのは、はたまた別の学問から考えていくのかを整理する必要があります。
このように、「素朴な疑問」を出発点にして、少しずついろんなことを整理していきます。
そして、さまざまな方法によって、その疑問を解消していきます。
みなさんが思っている以上に、研究の世界は地味です。
実験したり、文献を読んだり、調査に出向いたり・・・。
でも、今まで誰もわからなかったことがわかった時の喜びはひとしおです。
研究者には、それを最初に知ることができるという特権があるのです。
素朴な疑問を出発点にして、少しずつ社会にある問題を解き明かし、それを改善、解決していく術を一緒に考えませんか?
あなたが抱くその疑問が研究の出発点となりますよ!!
山本悦史先生のプロフィール
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hs/teacher/yamamoto.html
健康スポーツ学科
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hs/