体力医学会参加報告 ~博士課程2年 山﨑雄大君から~
昨日から始まった体力医学会参加報告の連載。
今日は山﨑雄大君(博士課程2年)からの報告をお伝えします。
以下、山﨑君からの報告です。
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私は、これまで行ってきた有酸素性運動が一次運動野の活動性に与える影響についての研究成果を発表しました。
【タイトル】
低強度ペダリング運動が一次運動野脚領域皮質内興奮性に与える影響
【研究背景と目的】
有酸素性運動を実施すると、脳の一次運動野と呼ばれる領域で脳内の抑制-興奮のバランスが一時的に変化することが分かっています。
この抑制-興奮バランスの一時的な変化は運動技能学習や学習した技能の記憶に重要な役割を果たすと考えられています。
しかし、「運動強度によって一次運動野の活動性の変化は異なる反応を示すのか?」「運動した部位と運動していない部位で反応は変わるのか?」などわかっていないことは多く残されています。
本研究では、低強度のペダリング運動を行うことで一次運動野の脚領域の活動性を変化させることができるか検証しました。
【方法】
実施した実験は①一次運動野の抑制反応を見る実験、②一次運動野の興奮反応を見る実験、③脊髄の興奮性を見る実験、の3つです。
それぞれ、運動した場合と運動しない場合の変化を別日に計測しました。
運動は低強度(心拍数100-110拍程度)のペダリング運動を30分実施してもらいました。
その前後に一次運動野の抑制、興奮反応、もしくは脊髄の興奮性を評価しました。
【結果】
低強度のペダリング運動後は、一次運動野の抑制反応が一時的に低下することがわかりました。
一方で、一次運動野の興奮反応や脊髄の興奮性では変化が見られませんでした。
以上の結果から、低強度運動後には一次運動野は脱抑制状態になること、そしてこの変化は脊髄レベルで生じたものではなく脳で生じている可能性が示唆されました。
【結果をどう生かせるのか?】
一次運動野の抑制-興奮バランスの一時的な変化、特に抑制の低下は運動学習や運動記憶に重要と言われています。
私たちの研究室では、低強度ペダリング運動後に手の領域の抑制反応も低下することを以前の研究で確認しています。
これら一連の研究結果から、低強度の運動は手や脚を用いた運動学習の効率や記憶の定着を高める可能性が考えられ、リハビリテーションの現場などで応用できる可能性があります。
今後、実際に低強度運動をすることで運動学習の効率を高めることができるかを検証します。
今回参加した日本体力医学会は、体力・スポーツ医科学を専門とする多くの研究者が集う学会です。
そのため、自分の研究に直結するような内容はもちろん、異なる領域の研究についても発表を聞くことができました。
また、多くの研究者とディスカッションすることでよい刺激を受けることができ、非常に有意義な学会になりました。
山﨑雄大君(博士課程2年)
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以前、山﨑君の実験をお伝えしました。
(2018年10月5日(金)公開ブログ)
山﨑君は日々研究に没頭し、大学教員を目指しています。
その中で、海外の学術誌に論文を投稿しています。
大学教員への道を切り開くことは決して簡単なことではありません。
運や縁も重要になってきます。
とはいいつつも、実力が無ければ運を引き付けることも、ご縁に恵まれることもありません。
大学院での日々は、まさに「実力」をつけるための下積み時代ということができます。
自分の研究と向き合い、寝ても覚めても研究について考え、学問を深める時期です。
そして、この時期に「どれだけ研究と向き合えたか」が、その後の成長につながっています。
栄養をたくさん蓄えることで、後に色鮮やかなオリジナルな花を咲かせることができるでしょう。
後に、山﨑君はどんな花を咲かせてくれるのでしょうか・・・?
教員一同、楽しみにしています。
新潟医療福祉大学 博士課程
https://www.nuhw.ac.jp/grad/field/doctor/major.html
新潟医療福祉大学 修士課程
https://www.nuhw.ac.jp/grad/field/master/hs.html
健康スポーツ学科
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hs/