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2008年12月26日 (金)

失認 agnosia

脳が情報を処理する機能の障害である認知機能障害のなかに、 「失認」 という不思議な障害があります。

まず、この絵を見てください。

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これは、ルーベンスの有名な論文で報告された失認の患者さんのものです。

青はモデル(お手本)、黒は患者さんモデルを写した絵です。

この患者さんはモデルの絵を見ても、それが何なのかわかりませんでした

絵が見えないのではありません。

だって、これだけ細かく絵を写せるんですからね。

ところが不思議なことに、この患者さんは絵を写したあとも、それが何なのかわかりませんでした。

そしてもっと不思議なことに、この患者さんに実物の鍵を手で触ってもらうと、それが鍵だと簡単にわかりました。

豚の鳴き声や小鳥のさえずり声を耳で聞いてもらうと、豚、小鳥とすぐにわかりました。

ヒトには視覚、聴覚、触覚などの感覚の機能があります。

体の外からの刺激は、目や耳などの感覚受容器で神経の信号に変換されて、感覚情報として脳へと送られます。

脳はこの感覚情報を、脳内に蓄えられた情報と統合して、刺激対象の意味を理解します。

「失認」は、脳に届いたある感覚の情報と、脳内に蓄えられた情報を統合する機能の障害です。

この患者さんは、脳に届いた視覚情報と脳内の情報が統合できなくなっています。

だから、絵を見ても何なのかわかりません

絵は視覚刺激として目で神経の信号に変換されています。

そして視覚情報として脳には届いています。

だから患者さんは絵を正確に写すことはできるんです

また、患者さんの脳内の情報は障害されていません。

だから触覚や聴覚経由で情報が届けば、それが何なのかもすぐに分かるのです。

この患者さんのような障害を視覚失認といいます。

‥‥ということは。

ヒトの感覚の種類に対応して失認があるということになりますね。

実際、聴覚失認、触覚失認という障害も存在しています。

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