疾病や障害のお話 Feed

2009年8月 7日 (金)

DAF ~人工吃音を体験しよう!~

今回は吃音の言語訓練でも使用されることのあるDAFを紹介しますshine

DAF効果(Delayed Auditory Feedback:遅延聴覚的フィードバック)によって、いつもはスムーズにことばを話せる人でも一時的に人工的な吃音(どもること)を体験することができます。

人工的な吃音を発生させる仕組みはいたって簡単です。

それは、自分が話したことばをマイクで入力しkissmark、ほんの少しだけ遅らせてヘッドフォンで自分の耳に聞かせるだけですear

こうすることにより、普段は同期している話しことばと聞こえてくることばにズレが生じ、混乱を起こしてどもってしまうのです。

また、どもらない人でも、きっと普段とは違う話し方(速度、リズム)で調整しようとするでしょう。

オープンキャンパスでは、パソコン機器のプログラムによってこのDAF効果を体験することができますhappy01pencil

ということで、明日お待ちしていま~す!!

2009年8月 6日 (木)

吃音 stuttering -Part.2-

~吃音の症状とその原因~

吃音の症状には、「お、お、おはよう」のように音を繰り返すだけではなく、「お~~~はようございます」と音を伸ばしたり、「…お!」とのどが詰まったり(音が出ない!)することもあります。

ほかにも、音が出ないので “まばたき” を頻繁にしたり、腕や頭を振ったりしてなんとか音を出そうとしたりする随伴運動が起こることもあります。

ひどくなると話すこと自体が怖くなり黙ってしまったり、人とコミュニケーションする場を避けようとしたりすることさえあります。



実は吃音の原因については、医学の発達した現代でも依然として解りません。

また「吃音を完治させます!」と自信をもって言えないのも残念なことです。

しかし、専門家による早期からの適切な支援により、少しでも吃音が悪くならないようにしたり、吃音をうまくコントロールして話しやすくしたりすることは可能です。

吃音を持ちながら、実に生きいきと充実した毎日を送っている人も多いのです。

2009年8月 5日 (水)

吃音 stuttering -Part.1- 

~吃音とは?~

「お、お、おはようございます」と緊張しすぎて、ことばがつまる状態を経験したことはありませんか?

このようにスムーズにことばを話せない状態を、一般的に「どもる(吃る)」と表現することが多いと思います。最近の若者は、TVの影響で「噛む」とも言いますよね。

中国語で「好吃(ハオ・チー)」というように、吃るの「吃」はもともとは「食べる」という意味です。

ことばがつまることを、食べるとか噛むとか食事の動作になぞらえるのは興味深いことですね。

さて、たまにどもる程度であれば良いのですが、なかには、どもることが習慣化してしまう場合があります。

そのような場合を専門用語で「吃音(きつおん)」と呼び、専門家(言語聴覚士)の支援(助言、訓練など)が必要な場合があります。


吃音が生じるのは、多くの場合、幼児期(3~4歳前後)です。
自然に治る場合もありますが、なかには小学生以降になっても治らないことも少なくはありません。

吃音があることで会話に不便を感じたり、“いじめ” や “からかい” に遭ってひどく傷つき、対人面で悩みを抱えたりすることもあります。

単に会話が不便というだけではなく、QOL(生活の質)にも大きな影響を与える問題です。

2009年5月12日 (火)

器質性構音障害 dysglossia

器質性講音障害とは・・・

先天性
(生まれる前から)、後天性(生まれた後に)を問わず声帯(喉)、舌、下顎、唇、口蓋垂などの発声発語器官のかたちや働きの障害により起こる構音障害です。

先天性に代表されるものには…

口蓋裂、舌の形態異常(巨舌症、小舌症)があります。

特に口蓋裂では、生まれつき口の中の筋組織、骨組織に裂がある状態なため、鼻咽腔閉鎖不全といった軟口蓋の動きが悪くなることがあります。

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ここで少し実験です。

「まみむめも」を鼻をつまんだ状態で言ってみてください。

どうですか?「ぱぴぷぺぽ」になりませんか?

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私たちが「まみむめも」を言うときに、口の奥にある軟口蓋が下がることで鼻に空気が流れ発音することができます。

逆に「ぱぴぷぺぽ」では軟口蓋が上がることで鼻へ空気が抜けるのを防ぎます。

ところが、口蓋裂では軟口蓋の動きが悪いために「ぱぴぷぺぽ」が言えなくなるなど、さまざまな構音障害が現れることがあります。

後天性に代表されるものには…

神経疾患や腫瘍の術後などがあります。

舌や下顎の歯列裏にある口腔底に悪性腫瘍がある場合には、これを切除しなければ命に関わることがあります。

腫瘍が大きければ切る範囲も大きくなり、舌を動かしにくい、もしくは舌が小さくなるために本来の舌の動きができない状態となり構音障害が現れます。

舌が小さくなってしまった場合には、舌接触補助床を上顎に装着することにより、舌を上顎に届きやすくして構音を助けます。

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写真は鼻息鏡です。

鼻から息がどのように漏れているか確認します。

2009年4月30日 (木)

構音障害 articulation disorders

構音障害とは、俗に言う「発音が悪い」状態です。

わたしたちは発声発語器官と呼ばれる声帯(喉)、舌、下顎、唇、口蓋垂などを動かすことによって声に変化をつけ、語音といった「ことば」を出すことができます。

ところが、なんらかの理由によりこの語音が出せない、もしくは誤った語音しか出せなくなった場合、話す相手に内容が伝わりづらくなってしまい意思疎通が困難になります。

構音障害を生じる原因としては様々な疾患があり、これにより大きく3つの分類がなされます。

●運動障害性構音障害
「脳血管障害」「筋委縮性側索硬化症(ALS)にみられる変性疾患」などに伴う構音障害

●器質性構音障害
「口蓋裂」「舌癌による舌・口腔底切除」などに伴う構音障害

●機能性構音障害
運動障害性、器質性の原因が認められない構音障害

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同じ「発音が悪い」状態でも、その原因によって検査や訓練方法は全く違うものになります。

2009年4月15日 (水)

自分の声を聞いてみると・・・・

皆さんは録音された自分の声を聞いてみたことがありますか?

昔ならカセットテープに録音しましたが、今ならMDに録音するのでしょうか。

一度でも自分の声を聞いたことがある人はその声に違和感を感じたことと思います。

「これは自分の声ではない」

でも、あなたの友達が聞いているあなたの声は、正にその録音された声に他なりません。

では、どうして自分が聞いている声は録音された声と違うのでしょうか?

それを解く鍵は骨導といわれる音伝導にあります。

自分の声は耳の穴(外耳道)を通って伝わる(気導)ばかりではなく、骨を伝わって音の受容器(蝸牛)にも伝わります。

つまり、二重に自分の声を聞いていることになります。

これを確かめるためにはどうしたらよいでしょうか?

学校の理科(物理)実験室にある音叉を振動させて額に当ててみて下さい。

そうすると音が聞こえてくるはずです。

額に耳ありません。でも音は聞こえてくるはずです。

これが『骨導』というものです。

この仕組みは聴覚系構造・機能でも学習しますし、聴覚障害演習聴覚心理学でも学びます。

これらは講義としては別であってもその根底には共通する事柄があります。

ただ単に暗記するのではなく様々な知識と関連づけて覚えていくことで体系的な知識を得ることができるようになり、きっと勉強も楽しいものになるはずです。

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2009年2月17日 (火)

いきいき健康セミナー開催のご案内

『認知症でも大丈夫~患者さんとご家族を支えるために~』

【日時】平成21年3月11日(水)15:30~17:00

【会場】新潟商工会議所 中央会館7階ホール
新潟市中央区上大川前通7-1243 地図参照

【講師】今村 徹 教授

【定員】120名

【聴講料】無料

【申込方法】下記連絡先までお問い合わせください

【連絡先】新潟商工会議所 教育・福祉部会 ℡025-290-4411

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本学言語聴覚学科教授でもある今村徹先生による『認知症』についてのセミナーが開催されます。

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今村先生は新潟リハビリテーション病院の神経内科(物忘れ外来)の臨床も行っており、このセミナーでは『ボケ』『認知症』の違いや、脳をいきいきと保つための予防方法等についてわかりやすく説明していきます。

『認知症』とは近年まで『痴呆』と呼ばれてきた疾患です。

『認知症』はコミュニケーション困難にみまわれるケースもあり、言語聴覚士の支援が必要となることがあります。

言語聴覚士を目指している人、また、言語聴覚士に少しでも興味のある人は、このセミナーで『認知症』を学んでみませんか?

ちなみに、今村先生の「認知症」に関する記事が新潟日報の発行する情報誌「assh」に掲載されています。ホームページからバックナンバーが見れますので興味があればチェックしてみてください。
http://www.assh.ne.jp/backnumber/special/vol91/ninchi01.html


2008年12月26日 (金)

失認 agnosia

脳が情報を処理する機能の障害である認知機能障害のなかに、 「失認」 という不思議な障害があります。

まず、この絵を見てください。

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これは、ルーベンスの有名な論文で報告された失認の患者さんのものです。

青はモデル(お手本)、黒は患者さんモデルを写した絵です。

この患者さんはモデルの絵を見ても、それが何なのかわかりませんでした

絵が見えないのではありません。

だって、これだけ細かく絵を写せるんですからね。

ところが不思議なことに、この患者さんは絵を写したあとも、それが何なのかわかりませんでした。

そしてもっと不思議なことに、この患者さんに実物の鍵を手で触ってもらうと、それが鍵だと簡単にわかりました。

豚の鳴き声や小鳥のさえずり声を耳で聞いてもらうと、豚、小鳥とすぐにわかりました。

ヒトには視覚、聴覚、触覚などの感覚の機能があります。

体の外からの刺激は、目や耳などの感覚受容器で神経の信号に変換されて、感覚情報として脳へと送られます。

脳はこの感覚情報を、脳内に蓄えられた情報と統合して、刺激対象の意味を理解します。

「失認」は、脳に届いたある感覚の情報と、脳内に蓄えられた情報を統合する機能の障害です。

この患者さんは、脳に届いた視覚情報と脳内の情報が統合できなくなっています。

だから、絵を見ても何なのかわかりません

絵は視覚刺激として目で神経の信号に変換されています。

そして視覚情報として脳には届いています。

だから患者さんは絵を正確に写すことはできるんです

また、患者さんの脳内の情報は障害されていません。

だから触覚や聴覚経由で情報が届けば、それが何なのかもすぐに分かるのです。

この患者さんのような障害を視覚失認といいます。

‥‥ということは。

ヒトの感覚の種類に対応して失認があるということになりますね。

実際、聴覚失認、触覚失認という障害も存在しています。

2008年11月24日 (月)

動揺病 motion sickness

日本ではあまり耳慣れない病名ですが、「乗り物酔い」と言い換えればわかる人は多いのではないでしょうか?

多くの人は、乗り物に乗ったときに具合が悪くなるという経験があるかと思います。
 
では、乗り物酔いはなぜ起こるのでしょう。

体のバランス(平衡)は

①耳からの情報(前庭系)

②目で見た情報(視覚系)

筋肉や関節などで感じる情報(深部知覚運動系)

の3つが脳で統合され、コントロールされています。
 
ところが車などに乗っていると、この3つの情報にズレが生じることがあります。

例えば前庭系から来る重力や加速度の情報、目が見ている視覚の情報、これら2つの情報と関節から来る頭や体の姿勢が一致しなくなり、脳のコントロールが上手くいかなくなります。

その結果、体温や血圧などを調節する機能に乱れが生じ、気持ちが悪くなったり、冷汗が出て顔が青白くなるなどの症状が現れます。
  

つまり、乗り物酔いを軽減するには・・・

情報を減らして混乱を防げばいいのです。

前庭系、視覚系、深部知覚運動系のうち簡単に減らせる感覚といえば……そう、それは目からの情報です。

目を閉じれば情報を遮断できますよね。

逆に、車に乗っているときに本を読むと具合が悪くなりやすいのは、他の2つの情報と視覚系情報のズレが大きくなるためです。
 
 
乗り物酔いは言語聴覚士が治すものではありませんが、耳鼻咽喉科学 全般を学ぶ中でこのような知識も身についていきます。

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図は鼓膜の奥にある内耳の構造です。

水色=蝸牛(音をきく聴覚器)

桃色=三半規管、耳石器(前庭系)

黄色=神経

2008年10月23日 (木)

失語 aphasia

ことばの障害にはいろいろな種類があります。

そのなかで、脳の中ことばをつかさどる領域が損傷されたときに生じる障害・・・

それが『失語』です。

ことばをつかさどる領域に問題がおこると「話す」「聴く」「読む」「書く」といった、ことばという“記号”をあやつる働きのさまざまな面が障害されます。
 

たとえば「話す」働きにみられる異常としては‥‥

→鉛筆を見てそれをことばにしようとしたときに
●「エンピツ」という単語が思い浮かばない (喚語困難)
●エンピツと言おうとしたのに「エンパチ」と音が入れ替わってしまう (音韻性錯語)
●エンピツと言おうとしたのに「ケシゴム」と単語が入れ替わってしまう (語性錯語)

などです。

 
たいていの場合、失語の患者さんは「話す」「聴く」「読む」「書く」はたらきのそれぞれに障害をもっています。
 
それらの組み合わせのパターンによって、失語はいくつかのタイプに分けられます。

代表的なタイプとしてブローカ失語、ウェルニッケ失語、伝導失語などがあげられます。

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